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5月5日 (金)12:00PM

長岡ジャンクションを下りると、関東では見られないファミレスやホームセンターのチェーン店がいっぱいあった。
「あっ、里味だ!よくラーメン食べたよ」
「いま看板が出てたharashinってスーパーは、新潟にいっぱいあるんだよ」
彼はその1つ1つに反応し、ていねいに私に教えてくれる。
昨年6月まで籍を置いていた営業所と長岡駅、社宅として住んでいたアパートの前を経由して悠久山公園に着いたのは、12時半を少しまわった頃だった。
私達は駐車場にクルマを止め、公園に向かいだした。
舗装されていない道に対して注意ぶかく歩みを進める私に、彼は手を差し出す。
お酒の入っていない状態で手を繋ぐのは、初めてのことだった。

「はい、どうぞ!」
私はお城のような郷土資料館の前のベンチにスチロール容器を3つ並べ、プラスチック製のフタを開ける。
中身はおにぎり3つと、ゴーヤチャンプル。
それと、キューピーのパスタソース・たらこを和えたタラモサラダ。
昨日の夕方から夜にかけて、私はお弁当を作ってきた。
やや大げさなくらい喜ぶ彼に対し、私は警告を発する。
「もし少しでも変なにおいが気になったら、捨てていいからね」
作ってから時間が経っているうえに、この好天で悪くなっていないか。
それは、味以上に心配なことだった。
「大丈夫でしょう。いただきます!」
気が向いたときにしか料理をしない私のお弁当をおいしそうに平らげる彼を見ながら、私はほっと胸をなでおろす。
薄日差す空。
休日の公園で手作り弁当を広げ、一緒に食べる。
(これが「普通」のカップルのやることなんだな・・・)
あれほど忌み嫌っていた「普通」という言葉が、やんわりとあたたかく重量感のあるものに感じた。

「この後さ、栃尾の湧き水行こうよ」
お弁当を食べ終わったあと、彼は言った。
まだ1時半。
ホテルのチェックインまでは十分時間がある。
園内の動物園を回り、見頃を終えたソメイヨシノや今が盛りのしだれ桜の前経由し、栃尾に向かった。
住宅街を過ぎ、少し迷いながら山道を走って1時間後、私達は杜々の森の湧き水に到着した。
湧き水までの道の一部はところどころに水たまりがあり、靴が汚れる危険を感じた。
私は大きく深い水たまりにぶつかりそうになるや、彼の手をとった状態で向こう岸までジャンプする。
「やるなあ、お主」
おどけた様子で私をたたえる彼。
小さい子どもにかえった気分で、私は得意になってえへへと笑う。
親子になった気分だ。
彼がお父さんで、私が小さい娘。
ゆるやかで穏やかで、贅沢な時間。
私はいま、そのさなかにいる。

名水百選にも選ばれた水が湧き出す周辺は、清澄な空気が漂っていた。
日頃の生活でため込んで来た毒気が抜け、体内に森の空気が入り込んで
くるのを感じる。
休日だからいつもよりにぎわっているはずなのに、それすらも包み込んでしまう。
自然の懐の大きさに敬意を示す。
名水百選に選ばれた水は、くせがなく冷た過ぎもしなかった。
カラダのなかがきれいになっていく気分だった。
ココロのサビ、日々の疲れ。
湧き水がこれらを流し去ってくれる。
幻想にも似た思いを抱きながら杜々の森を後にし、恋人岬を経由してホテルにたどり着いた。
部屋に入り、和室と窓側のソファーを隔てる引き戸を閉める。
浴衣と丹前に着替え、髪をクリップで留める。
旅はまだ1日目も終わってはいない。
少しだけ明るい空を眺めながら数十分、数時間、翌日という近い未来に期待し、私は引き戸を開けた。
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