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5月5日 (金) 7:00PM

少しとろみのある温泉から出て部屋に戻ると、彼はもう戻っていた。
メガネをかけ浴衣と丹前姿の彼は、まるで近代の文士みたいだ。
さっきとは全然違う知的な外見。
私は内心、どきりとする。
「これがウワサのメガネ?」
「そう。家でしかかけないけどね」
「えーっ、すごく似合ってるけどなあ。メガネ姿も普段もどっちもいいよ」
私は素直にメガネ姿をほめる。
そんなふうにほめられたのは初めてだ、という表情で彼は私に目を向けた。

夕食は部屋食だった。
新潟でとれた新鮮な海の幸が、これでもかというほど並ぶ。
2月に相馬で食べたそれとやや趣きが違い、正統派の旅館の夕食といった風情。
私はそこがいたく気に入った。
仲居さんにツーショット写真を撮ってもらったあと、私は冷蔵庫から取り出したビールの栓を抜き、乾杯する。
昼食を軽めにしか摂っていなかった私はお腹がすいていて、喋りながら食べて飲んでばかりだった。
2本目のビールを空け、お腹がふくれてきた頃、彼は『一刻者』を取り出した。
彼自身がとくに大好きな銘柄だ。
それらを飲んでいるあいだ、料理の皿が片付けられ、布団が敷かれる。飲まずにはいられない。
表には出さなかったが、私はとても照れていた。
テーブルの右側に敷かれた白くてやわらかそうな2つの布団。
この布団で眠りにつくのは、明かりを消してすぐではないだろう。
「もう寝ようか」
私も彼も、2つ並んだ布団を1つずつ使う。
「おやすみなさあい」
私は目を閉じる。

左側から
「もう寝た?」
という言葉が聞こえたのは、おやすみと言ってから3分もしない頃だった。
「うん、とてもよく寝てる」
私はからかい口調でしらばっくれる。
「俺眠れないんだけど」
ああそう、と言うまえに
「そっち行っていいすか?」
と、彼が言った。
「いいけど高いよ」
少しそっけない調子で告げるや、彼は私の布団に入り後ろから抱きしめた。
「どれくらい?」
「すごい高いよ。円じゃなくてドンかも」
「ドンじゃ安いじゃん」
「じゃあ、ユーロかな」
そんな言葉遊びが行き止まりになった頃、私は彼の方を向き、唇をかさねた。
やわらかい舌が唇を押し寄せて入り込んでくる。
時間にすると1分は超えただろう。
このままずっとキスしていつづけそうだ。
私は唇を離す。
「最初のキスは普通にしようよ」
案外キスのうまい彼をいさめ、私は彼の肩に腕をまわした。
やがて浴衣のひもがほどかれ、ブラがはずされ、何もまとっていない状態になる。
彼も同じような状態になり、私のカラダに舌や指をはわせる。
彼は均整がとれた体つきをしていて、少しだけ逆三角体系だった。
息をはずませながら私は聞く。
私で何人目なのか、と。
経験は私で3人目だと言う。
私は少しだけ嘘をつき、経験した人数は5人と告げた。
そこだけ素に戻った喋り方になったが、なおも愛撫は続く。
しかし、できなかった。
男のヒトにはよくあること。
「仕方ないよ」
私は彼をなぐさめる。
私達は浴衣を着て、横向きに抱き合いながら眠った。
もしかしたらお互いが欲していたのは、セックスよりもこういったあたたかい眠りなのかもしれない。
やっと恋人同士になれた―。
真実はどうあれ私と彼はこの夜、男と女になった。
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